「スペシャリスト」という言葉にはどのような意味が含まれているのでしょうか?
今回は、これからの時代のビジネスパーソン、社会人にとって目指すべき指標となる「スペシャリスト」の意味や定義について解説していきます。
この記事を読むことで、スペシャリストの意味を理解することができるとともに、今後の時代の働き方についても考えるキッカケを学ぶことができます。
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INDEX
スペシャリストの意味とは?
スペシャリストという言葉・概念には、どのような意味・定義があるのでしょうか? スペシャリストの基礎的な意味・定義を確認していきましょう。
スペシャリストとは?|意味・役割
特定分野を専門にする人。特殊技能をもつ人。専門家。「労務管理のスペシャリスト」
スペシャリストとは、現代のビジネス現場において重宝される「特定分野の深い専門知識を持つ人材」のことを指します。「No.1」かつ「Only 1」であることが求められる立場であるといえます。
具体的には、下記の職業についている人を一般に「スペシャリスト」と呼ぶことができます。もちろん、下記の業界・業種/職種だけがスペシャリストなわけではなく、ほんの一例です。
- 〇〇専門家
- 技術者(エンジニア)
- デザイナー
- 医者・看護師・薬剤師
- 士業(弁護士・公認会計士など)
- 研究員・大学教授
- マーケター
- etc…
特定分野の知識について、深い見識を持つとともに、その業界の最先端を走り続ける人こそ、スペシャリストといえます。
ただし、後ほど解説するように、現代のビジネス現場ではスペシャリスト育成は多方面で行われていますし、技術革新によってIT業界以外の業種/職種でもスペシャリストが早い段階で求められる時代。
だからこそ、仕事をするすべての人が何らかのスペシャリストを目指さなければならない時代が到来した…ということもできます。
「スペシャリスト」と「ゼネラリスト」の違いとは
スペシャリストの対義語として「ゼネラリスト(ジェネラリスト)」という概念があります。
一般的には、スペシャリストと対比されて説明されることが多いですが、スペシャリストとゼネラリストは関係のないものではなく、密接な繋がりがあります。
広範な分野の知識・技術・経験をもつ人。ジェネラリスト。 → スペシャリスト
ゼネラリストは、ビジネスの現場においてひとつの分野にとどまらず、多様かつ広範囲の技術や知識を駆使して働く人や、数々の職種/業種、業界の経験をもとに成果を出すビジネスパーソンのことを指します。
スペシャリストとゼネラリストは、仕事をするうえで担当する「業務範囲」が異なります。
たとえば、エンジニアはスペシャリストですが、エンジニアが作成するサービスのマネージャーは、ゼネラリストになります。
エンジニアのやっている仕事の進捗管理や目標管理、メンバーとのコミュニケーションなど、マネジメントの側面を担う必要があるため、結果的に広範囲の仕事をしなければなりません。
大企業の総合職や公務員の一般事務の仕事をイメージすると分かりやすいです。
「スペシャリスト」と「プロフェッショナル」の違いとは
スペシャリストと似たような言葉として「プロフェッショナル」というものがあります。プロフェッショナルの定義を確認すると、下記のようになります。
プロフェッショナル (英:Professional)、略して「プロ」は、本来の意味は「職業上の」で、その分野で生計を立てていることを言い、「公言する、標榜する」が語源である。対義語はアマチュア (英:Amateur)。類義語にエキスパート (熟練していること 英:Expert、対義語は 英:Inexpert )、スペシャリスト(特化していること 英:Specialist、対義語は 英:Generalist )がある。
プロフェッショナルとは、自身の職業で生計を立てている人のことを指します。
また、その前提を踏まえたうえで、自分の担う仕事にプライドと自尊心を持っている人のことを指します。
たとえば、「プロ野球選手」「プロボクサー」など、スポーツ分野で成果を出し続ける人のことや、NHKのTV番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演する職業人のことをイメージすると分かりやすいのではないでしょうか?
つまり、ゼネラリスト・スペシャリストの言葉に出てくる「業務範囲」とは、プロフェッショナルは関係ありません。
たとえば、管理職・マネージャーとして行きていくことに責任と誇りを感じており、それで生計を立てている人であれば、「ゼネラリストかつプロフェッショナル」だといえますね。
あくまでも、仕事に対する姿勢のことを指す言葉です。対義語は「アマチュア」なので、イメージがつきやすいと思います。
「スペシャリスト」と「エキスパート」の違いとは
次は、スペシャリストと「エキスパート」の違いについて解説していきます。
エキスパートの意味・定義は下記のようになっています。
ある分野に経験を積んで、高度の技術をもっている人。専門家。熟練者。「経営のエキスパート」
エキスパートは、その言葉のイメージ通り、特定分野の熟練、熟達者のことを指します。分野に精通している〇〇専門家は、エキスパートでもあるわけです。
しかし、たとえば若手の医者と定年間近の医者はどちらも「スペシャリスト」ですが、エキスパートなのは臨床経験や場数、勤続年数の面で定年間近のお医者さんであることは確かです。
対して、若手医者はスペシャリストとして第一歩を踏み始めたばかりですから、「ビギナー」といえます。ビギナーはエキスパートの対義語です。
つまり、スペシャリストは「業務範囲」を表す言葉ですが、エキスパートは「熟練度」に関する言葉なのです。
ただし、熟練度をどのようにして判断するのかについては、意見が分かれます。たとえば、若手の医者であっても熟練しているとされる医者よりも新しい発見する可能性が低いわけではありませんよね。
また、たとえば若手管理職でも、熟練しているとされるシニアマネージャーより、より若手社員のモチベーションアップやリーダーシップ発揮が得意な場合があります。
そのため、安易にエキスパートの基準を決めることにはデメリットがあるといえるでしょう。
ここまで、スペシャリストの意味と定義、そして関連する紛らわしい言葉であるプロフェッショナルやエキスパートとの違いについて解説してきました。
混乱する方も多いと思うので、下記で一覧でまとめてみました。スペシャリストと他の言葉の意味の違いは下記の通りです。
- スペシャリスト⇒業務範囲が狭く特定分野に特化して仕事をする人
- ゼネラリスト⇒業務範囲が広く特定分野に限らない仕事をする人
- プロフェッショナル⇒自分の担う仕事に責任とプライド持って仕事をする人
- エキスパート⇒一つの分野に熟練している人(業務範囲は問わない)
こういった働く人を表す言葉の中でも、特にスペシャリストは現代社会で重要な役割を担う時代になってきています。
そこで次に、スペシャリストが社会でどうして必要性を増してきたのか、その歴史の変遷について見ていきましょう。
スペシャリストが社会で必要になるまでの歴史の変遷
ここでは、スペシャリストがどうして現代社会のビジネス現場で必要性を増してきたのか、その歴史の変遷について見ていきます。
あなたのキャリア・働き方にも深く関わってくる話題なので、ざっくりとスペシャリストの必要性について学んでみることをおすすめします。
高度経済成長からバブル期までの日本企業の変遷
日本の経済は高度経済成長時代に発展を開始したことを皆さんはすでにご存じだと思います。
そして、バブル期の崩壊を迎えるまでは、「大量生産・大量消費」の時代が長く続きました。
その結果、「一億総中流時代」⇒「バブル経済の加熱」という流れを、日本社会は経験しています。
一億総中流時代からバブル期にかけては、企業が世の中の流行をつかむことが簡単でしたし、モノを作れば作っただけ売れる消費型経済でした。企業に求められる能力は、いかに効率的に商品を生産し流通させ顧客に届けるのか、という面に絞られていたのです。
そのため、企業は安定的な成長をすることが可能でしたから、日本的な雇用慣行(新卒一括採用・終身雇用制・社内人事異動制度・年功序列型賃金制度など)も安定し、世の中に自然に溶け込みました。
そして、それが当たり前になっていったのです。
ゼネラリストが求められる雇用環境と社会
今でこそ日本型経営の弊害として語られることの多い日本的雇用慣行ですが、その当時は非常に合理的なシステムでしたし、海外からの評価も高かったのです。
さて、そんな中、企業で働く人材には何が求められるようになったか、すでに皆さんには察しがついていることと思います。
日本の大企業のホワイトカラー人材には、効率的に業務を配分してこなせる柔軟な人材が社内で求められるようになっていました。
会社に一度入ったら定年まで勤め上げ、定年後は退職金と年金で生活する。そんなルートが一般的でしたから、世の中の人材の流動性が著しく低くなっていったのです。
あとから分野に特化した人を雇うのはほんの少しの例しかなく、ホワイトカラーのほとんどは早い段階で広い業務を担当できる「ゼネラリスト」になることが普通だったといえます。
専門技術を習得しているスペシャリストが求められる時代へ
しかし、昨今ではそんな長く続いた状況が変化しつつあります。
ホワイトカラー層に求められる能力が、少しずつ専門特化する方向へと変化していったのです。そうなった理由は様々なものが絡みますが、全体の流れとして現実的にそうなっています。
たとえば、一般企業でも法務部門や経理部門等に求められる知識を持つ人はスペシャリストが在籍していましたが、ゼネラリストが多くいた「営業」「企画・マーケティング」など、自社商品・サービスを顧客に届ける役目を担う花形部門でも、専門特化した知識が求められるようになってきたのです。
マーケットのニーズをとらえるための企業活動も専門知識が必要になりましたし、インターネットが誰でも使えるようになった現代では、顧客が商品・サービスを買うまでに仕入れられる情報が多くなりました。
一人ひとりの顧客に合わせたアドバイスやコンサルティング、マーケティングが必要になってきています。
また、スペシャリストという観点では医者や看護師、薬剤師のほか、介護などこれからますます必要になる職種でも人手不足が深刻な社会問題になっています。
スペシャリストの活躍と転職市場の活性化
このような時代の流れから、スペシャリストはひとつの企業にとどまらず、多様な企業・業界を通して必要になってきています。「ITエンジニア不足」などもその一例です。
大手転職サイトを運営している「DODA」によると、2018年度上半期の転職市場予測に下記のような説明がされています。
おもにIT化やライフスタイルの多様化の影響で、ビジネスの複雑化・ボーダーレス化が進んでいます。あらゆる企業がデジタルデータの蓄積・活用に注力したり、膨大なデータをもとにまったく新しい商材をリリースしたり、今まで縁のなかった会社同士が提携したり、といった変化がもたらされています。こうした企業活動をスピーディに展開するには、今の社内にいないタイプの人材を招き入れる必要があります。
引用:転職市場予測 2018上半期 – DODA 太字筆者
このように、スペシャリスト人材がこれからますます重要になっていきます。
ただ、上記の説明だとスペシャリストではなく「ゼネラリストが求められているのでは?」と感じますよね。
そのイメージはとても重要なポイントで、「スペシャリストを兼ねたゼネラリスト」が求められていると言う事実があるのです。
つまり、スペシャリストであることは当たり前で、かつ業務範囲を広げた人材が、キャリアアップ・年収アップを目指せる、という図式になっていきます。
では次に、「じゃあ、スペシャリストにはどうなれるの?」というポイントについて解説していきます。
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