企業が行う「人事異動」には、具体的にどのような意味があるのでしょうか?
人事異動は、世の中の社会人・ビジネスパーソンが悩む大きなテーマです。
しかし、「〇〇の部署に配属だ」「転勤になった」という悪いイメージだけが人々の印象に残り、実際になぜ企業が人事異動を行うのかについて、詳しく考える人は少ないのではないでしょうか?
そこで今回は、企業が社員に対して行う人事異動の意味や定義などを解説したのちに、あなたの働き方にも関わる人事異動への対処方法なども一緒に解説していきます。
この記事を読むことで、あなたがあなた自身の働き方に主体的になることができます。今後の働き方やキャリアを考えるうえでもとても重要なので、ぜひ今回の記事を参考にしてください。
「転職活動を始めたい」と少しでも考えている方は、ぜひ下記記事をご覧ください。
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人事異動の意味・役割とは?
ここでは、人事異動の意味や定義について、様々な関連性や意味内容の違いをもとに解説していきます。
若手からミドル層まで、様々な社会人が気になる「異動」の意味を、ここでしっかりおさえておきましょう。
「異動」の本来の意味・定義
人事異動と異動はほぼおなじ意味として用いられますが、まずは「異動」の本来の意味を確認していきます。異動は下記のように、大まかに2つの意味合いがあります。
い‐どう【異動】[名](スル)
1 職場での地位、勤務などが変わること。また、転・退任などの人事の動き。「総務課へ異動する」
2 物事に、前の状態と違った動きが起こること。
引用:異動 – goo辞書
1つ目の意味は、あなたがイメージしているであろう通りの意味で、職場での地位や勤務形態や部署への転任・退任を表す概念です。
また、物事や概念が、以前とは違った動きになっていくことを表します。それが2番目に定義です。
ビジネス現場では、異動が下記のようなケースで用いられます。
- 営業部門から経理部門へ異動が決まった。
- 4月から〇〇営業所へ異動が決まった。
- 人事異動で係長に昇進した。
- プロジェクトが異動になった。
また、ビジネス現場以外でも「異動」はよく活用されます。たとえば、「住民票の異動」「金融市場銘柄の異動」などで活用されます。
住民票や金融市場銘柄が動くことは、厳密には「異動」ではありませんが、特例として使われている用法になります。
「異動」と「移動」「異同」の違いは?
人事異動の詳しい内容について見ていく前に、関連語句との違いを明確にしていきます。「異動」と「移動」「異同」は紛らわしいので、雑学としてチェックしておきましょう。
「異動」と「移動」の違い
異動と「移動」は似ている言葉ですが、その意味には大きな違いがあります。移動は「場所から場所へ移ること」を意味します。そのため、仕事現場で表すなら「オフィスの場所を移動した」「働く場所が移動した」ということになります。
一方、異動は「地位・役割・勤務形態などの人事的な動き」のことを表すため、たとえばデスクの位置が変わらなくても業務内容や役職が変わったら異動になります。
「異動」と「異同」の違い
これは雑学的なお話ですが、異動は「AとBは異同である」という風に用いる言葉です。つまり、「同じではない」という意味になります。
このように、同じ音で言い表すが意味はまったく違う…というビジネス用語はほかにもあるので、用語として学習する際には注意することが大切になります。
「人事異動」とは|意味
では、今回の記事の本旨である人事異動の意味・定義について見ていきます。
人事異動は、あくまでも会社組織の人事部や経営層が意思決定することによって起きるものなので、個人で担当する業務が変わったことを異動とはいいません。
会社または組織の中において、担当する職務または役職、勤務地が変わること。『人事異動』とも呼ばれる。
例えば『総合職』として採用された場合、従事する職務や勤務地を特に限定しない包括的な雇用契約が結ばれていることが一般的。職務や勤務地を明確に限定した雇用契約でない限り、会社は原則として自由に人事異動を命じることができる。
引用:異動 – コトバンク
人事異動とは、組織における人事的な地位・立場・役職の変更のこと。
ちなみに人事とは、「組織における人という資源をどう配分するか」に関する事柄で、地位や所属部署、職務能力や待遇に関することを指します。
あとから細かく人事異動の種類について解説しますが、人事異動には「配置転換・転勤・転籍・出向・昇進・昇格・昇給・昇任・降格」など多くの意味が含まれています。
また、勤務先が変わることを表すケースもあります。
その性質上、必ずしも社員にとってメリットがあることだけではなく、単身赴任のキッカケになったり、職場の待遇に不満を抱いたりする原因になったりすることがあります。
人事異動に対してどのように対照するべきかも、会社で働く上では必ず注意しておくべきです。
「人事異動」の種類とは
「人事異動」には、さきほど軽く解説したように様々な種類があります。
これらすべての種類について確認しておけば、どんな場合が人事異動に当てはまり、それに対処するためには何をすれば良いのかが分かりますので、ぜひチェックしておきましょう。
1 転勤
単身赴任や引っ越しを伴う、会社内での異動が転勤です。
これは働いている人への影響が大きい人事異動であるため、転勤を命じられる前に経営層や人事で会議されることが多いです。
企業によっては、社員に直接ヒアリングをしたうえで転勤を命じるケースもあります。
営業所・視点が各地域にある企業では、県外への転勤もあります。また、グローバル展開をしている企業でも、海外への転勤などがおこなわれます。
2 出向
出向とは、今現在所属している企業と雇用契約を結んだ状態で、子会社・関連会社に社員を出向かせることです。
雇用契約はもとの会社のままなので、給与の支払いなどの人事は大元の企業が担う一方、業務の具体的な指示命令は出向先企業から出されます。
場合によっては、転勤と同じような働き方の変化が起きることもあります。
3 転属・部署異動・配置転換(ジョブローテーション)
部署が変わることを部署異動・配置転換といいます。カタカナ語ではジョブローテーションとも呼ばれます。
これは一般的な異動で、公務員の方では数年に一度配置転換が行われることが多いため、イメージしやすいのではないでしょうか。
たとえば、企画部門から経理部門、営業部門からマーケティング部門などへ、人事の命令とともに配置が変わることを指します。
4 昇進・昇給
昇進や、昇進に伴う昇給も人事異動の種類のひとつです。
異動とはちょっと違うもののように感じますが、人事異動の一つの種類には変わりありません。
係長への昇進や、管理職への昇進に伴う昇給などというカタチで使われます。
5 降格
社員にとって一番大きなデメリットになるのが「降格」です。昇進とは逆の意味でイメージすると分かりやすいです。
「係長から平社員に戻る」など、元いた役職から役職以前の立場に戻ることを指します。
6 転籍
転籍とは、今現在所属している会社との雇用契約を解約した上で、転籍先の企業と改めて雇用契約を結ぶことです。転籍も、ほかの人事異動とは性質が違いますが、人事異動のカテゴリになります。
アメリカでは人事異動の概念がない?
人事異動を深く知る上では、海外、特に米国企業との人事異動のあり方の対比をすると分かりやすいです。アメリカ企業には、日本のような広い意味での人事異動はありません。
アメリカでは、日本のような経営スタイルではないため、企業の中で抱えている人材を様々な部署に配置して育成する、という方針を取らないことがほとんど。
外資系企業を思い浮かべると、その性質が理解しやすいのではないでしょうか。
基本的には、米国企業での人事異動はエグゼクティブ、経営陣やトップマネジメント層だけで行われます。
日本的なゼネラリストを育成するスタイルではなく、スペシャリストを会社の利益になる形で採用することが一般的なのです。
ただし、日本でも裁量労働制や成果主義を取り入れていく流れができていますので、今後は人事異動も総合職のようなジョブローテーション方式ではなく、社会人がそれぞれ自分のスタイルに合わせて転職していくような形式になるかもしれません。
「スペシャリスト」に関しては、下記記事で詳しく解説しています。
おすすめ記事:スペシャリストの意味とは?ゼネラリストとの違いと目指すべき理由
ここまで、異動や人事異動の意味や定義、そして細かな種類について用語解説を交えながらご紹介してきました。
また、人事異動という制度が日本企業固有のものであり、米国ではトップマネジメント層だけで行われるものであることも紹介しました。
ただ、人事異動は必要とする会社も多く、今後もそういった制度を維持している企業で働く方もいると思います。
そのため、人事異動に対しては、個々人がどのように対処すべきなのか、知っておくことが大切になります。
次は、会社が人事異動をする目的について見ていきます。
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