人事異動の「内示」には、どのような意味・定義があるのでしょうか? また、人事異動で内示が出されることの効力には、どのようなものがあるのでしょうか?
今回は、人事異動やその他のビジネス現場でも活用される「内示」という概念について、辞書的な意味合いと現場での使われ方の両方を解説していきます。
特に、内示は人事異動で用いられることの多い言葉なので、しっかりおさえておくことが大切です。
今回の記事を参考に、内示の意味・定義について詳しく知っておきましょう。
「転職活動を始めたい」と少しでも考えている方は、ぜひ下記記事をご覧ください。
INDEX
人事異動の内示の意味・役割とは?
人事異動の「内示」の本来の意味・定義
まず最初に、「内示」の意味をざっくり確認しておきましょう。
ない じ [0] 【内示】( 名 ) スル
公式ではなく,内々に示すこと。 「転任の-を受ける」
[名](スル)《「ないし」とも》非公式に通知すること。「内示を受ける」「昇進を内示する」
引用:内示 – コトバンク
[名](スル)《「ないし」とも》非公式に通知すること。「内示を受ける」「昇進を内示する」
引用:内示 – goo辞書
内示とは、公式に相手に何かを伝える前に、事前に非公式の方法で物事を伝達することを指します。
その意味から、従業員に対して会社側が人事異動を正式に命じる前に「内示」と言うカタチで本人に異動予定であることを伝えるのが人事異動における「内示」の意味です。
内示は、直属の上司/上層部から、口頭かメールで通知されます。正式な辞令が出る2ヶ月〜1ヶ月前に出されることが一般的です。
会社が人事異動で「内示」をおこなう理由
辞令は正式に従業員に対して異動を通達するための制度です。その制度があるにも関わらず、なぜ「内示」が必要なのでしょうか?
その理由は、「準備期間を従業員に取って異動までの整理をしてもらうこと」にあります。
たとえば、異動を命じられて明日からすぐに他部署でさっと働き始められる人は少ないでしょう。
実際に部署異動する際には、新しく取り組む仕事内容や関わる上司とのやり取りが発生しますし、今取り組んでいる仕事を中途半端にしないために、完了させるか引き継ぎをおこなう必要があります。
2ヶ月前〜1ヶ月前に辞令を出すことを予告することで、準備期間を作るために内示はおこなわれます。
また、内示を受ける側の従業員にとっては、精神的な準備期間でもあります。
これまである程度長い期間勤めていた部署を異動するわけですから、事務的な処理では片付けることのできないもの(人間関係や次の上司へのあいさつなど)をする必要もあります。
「内示」が出される時期
内示が出される時期は、先ほど解説した通り、辞令が正式に出される2ヶ月前〜1ヶ月前が一般的になります。
2ヶ月前の内示は”内々示”と呼ばれます。(内々定の内示版です)
内示は大企業であれば十分な期間を確保した上で辞令の準備をすることができますが、人材確保が難しい中小企業では、人材募集が間に合わず、社内人材を異動させることで補充するケースもあるようです。
この場合、内示から辞令までの期間が極端に短くなってしまう場合があるので、これまで同僚・上司に内示が出たケースを確認しておき、自社の「内示⇒辞令」までの期間がどの程度なのかを調べておくと良いでしょう。
「内示」と「辞令」の関係性と効力の違い
「内示」と「辞令」の関係性について、効力の観点からもう少し深掘りして見ていきましょう。
辞令発令前に通知されるのが「内示」ですが、辞令は公式な命令である一方内示は非公式のものです。しかし、非公式とは言っても人事や上層部に人事権がある以上は、特別な理由なしに内示を拒否することは不可能です。
ただし、ケースによっては、内示・辞令などの人事異動を拒否することができるケースもあります。
ただ、拒否した後に、その会社で継続して働き続けることは、実際のところ難しくなってしまうことがほとんどです。
人事異動の「内示書」の参考例
辞令とは異なり、内示では口頭で上司から通知されることもあります。そのため、必ず書面上の手続きが整っているケースばかりとは限りません。
また、メールで通知される場合もあります。
内示を通知する書類には「内示書」というものがあり、「人事異動で辞令を命じますよ」という旨を示す内容が書面で通知されるケースもあります。
内示書には、下記のような内容が書かれていることがほとんどです。
内示書に書かれている内容
- 現在の事業所・店名
- 現在の部署名
- 現在の役職名
- 異動先の事業所・店名
- 異動先の部署名
- 異動先の役職名
- 移動する日付
- 異議申し立ての際の方法
- 備考欄
- 内示書を出した上層部・人事部の担当者名
直属の上司に対して連絡すべき事項などが書かれている場合もあるので、内容をよく確認しておき、その後に冷静に対応できるようにしておきます。
物流業界における「内示」の意味・定義
内示という言葉は、業界に特化した用語があります。
そのうち、物流業界では、荷物の量を定期的に出す制度が内示として行われるケースがあります。
物流業界では、発注後に相手へと届くまでの時間を物流リードタイムと呼びますが、この時間を効率化することで売上ひいては利益がアップすることになります。
荷物を出荷する量とスピードが向上するため、物流を請け負う会社は陸送の場合のトラック配車を効率的にする必要が出てきます。
この際には、依頼者が物流会社に先々に発注する荷物量を内示として伝えておくことで、配車のムダをなくすることができるというメリットがあります。
依頼する側と、物流を請け負う側が密に連携を取ることを内示と呼びます。実際の発注の前に、非公式の発注をする…と言い換えると分かりやすいといえます。
物流にも、人事異動の内示書のような「内示書」を書く場合もあります。こお場合、どのくらいの荷物を送るのか、その物量をできる限り正確に計算することが重要になります。
内示受注とは
内示受注とは、商品・サービスの受注前に、内示をおこなって受注することをいいます。「仮の発注」の意味合いで用いられています。この場合も正式な契約書の作成前に内示書を作成します。
たとえば、納期に期限があるが価格交渉はまだ継続中…という場合、実際に価格が最終決定するまでの意思決定スピードよりも、現場での受発注が早ければ損をする可能性があります。
また、在庫を抑えたり、出荷準備をおこなったり…という現場作業を含むビジネスでは、いかに無駄なく仮発注、推定発注をおこなえるかがカギになります。
内示発注には様々な種類があるので、下記でご紹介していきます。
1 先行手配の内示書
正式な手配書類は後々に回し、まずは納期に遅延することがないように依頼するための内示書です。正式な契約書ではないですが、お互いのメリットになるように非公式の契約を結んだことと同義になります。
2 先行納入手配の内示書
正式な発注書が意思決定の不備や準備の遅れによりまだ用意が完了していないが、相手側から品物を先に送ってもらうことを依頼するための内示書です。
(発注書に)先行して納入手配を依頼する内示書という意味合いがあります。
もちろん、金額は後々支払いますが、支払いと納入が同時ではないため、パートナーシップを結んでいる企業間や、慣習としてそう成り立っている企業間で活用されます。
3 見積り依頼の内示書
商品購入金額がまだ決定していないが、見積書を作成してほしい旨を依頼するときの内示書になります。購入すること自体は明白であることを前提として、相手に発注することを示すために活用されます。
内示発注には、内示が非公式の意味合いであることとは裏腹に、「契約」として法的拘束力が発生します。そのため、契約不履行を相手に認めさせることができるケースも多いです。
認められた場合には、損害賠償請求などの民事賠償が行われます。しかしながら、慣行として行われていることも多いため、寒冷として契約に当てはまらないケースもあります。そういう意味では、非公式であるともいえるでしょう。
ここまで、人事異動の「内示」の意味や辞令との効力の違い、そして人事異動の内示以外で用いられる内示について解説してきました。
どの意味をとっても「非公式な側面が残る通知・書面」を意味します。しかし、ほとんどの場合、社内規則や法的拘束力で、後から覆すことが困難なものであることも事実です。
特に人事異動の内示では、言い渡されたときに注意するべきことがあります。
人事異動で悩むビジネスパーソンは多いため、次は、内示を言い渡されたときの注意点や、取るべき行動を解説していきます。
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