残業月60時間は長いのか?長時間労働を改善するためにできること

残業月60時間は長いのか?長時間労働を改善するためにできること
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 「月に60時間以上残業している」という方は、ブラック企業の問題が表出しやすい現在でも、まだまだ多いのではないでしょうか?

また、慢性的に残業が行われている職場では、違法性のある残業に悩まされているものの、具体的な解決策や手立てがなく、諦めかけている人もいるかもしれません。

月60時間以上の残業は労働基準法上認められていません。しかし、ケースによっては違法性がない場合もあるため、「どのような場合に違法になるのか?」「違法の場合はどんな対処をすべきなのか?」を知ることが大切になります。

今回は、月60時間以上の残業に悩まされている人に向け、月60時間残業に関する様々な問題と解決策を準備しました。今回の記事を参考にすることで、長時間労働を解決するための知識を学ぶことができます。

 

60時間の残業は長いのか?|平均との比較をしてみよう

60時間の残業は長いのか?|平均との比較をしてみよう

「月60時間以上の残業は当たり前」…そんな職場で働いている方はまだまだたくさんいるのが現状です。

特に、残業時間と通常の勤務時間の境目がよく把握されていない現場で働いている場合…

  • 「未払い残業代が発生している」
  • 「サービス残業が常態化している」

というケースに悩まされている人も少なくありません。

ここでは、月60時間の残業がどの程度一般的に行われているかを確認したあと、月60時間の残業がどのような場合に違法になるのか、その基礎知識について見ていきます。

残業代を請求しようと考えていたり、働き方を変えたいと少しでも思っていたりする方は、下記の内容を参考にしてください。

 

月60時間の残業は平均と比べてどのくらい長い?

残業時間の平均データを見ると、全業界の残業時間平均がどの程度なのかを見ることができます。

転職クチコミサイト「VORKERS」が調査した「調査レポートVol.4 ‘残業時間に関するレポート’」によると、全業界の平均残業時間は「約47時間」となっています。

年収別の平均残業時間

引用元:https://www.vorkers.com/hatarakigai/vol_4

一般に年収が高い人ほど残業時間も多い傾向にありますが、年収300万円以下でも40時間近くの残業時間が平均です。

月60時間を超える残業に慣れていると「このくらいの残業は当たり前」と納得してしまいがちですが、平均を見ても「普通」ではないことが、客観的なデータから明らかにすることができます。

 

月60時間の残業が違法になるケース・違法にならないケース

月60時間の残業は違法なのでしょうか?

それを確かめるためには、「残業」の定義から詳しく知ることが必要です。

残業とは「法定労働時間を超えて働いた時間」のことを指します。そのため、会社が独自に決めた基準で残業かどうかが決まるわけではなく、労働基準法によって残業時間は決められています。

法定労働時間とは「1日8時間、週40時間以内の労働時間」のことを指します。それ以上の時間はたらくためには、会社と社員(従業員)が「36協定」という協定を結ばなくてはなりません。

つまり、「36協定」の締結の有無や、36協定が明確な形で適用されているのかなどによって、月60時間の残業が違法かどうかが変わってきます。

 

1 36協定が正しく締結されていなければ違法

36協定とは、「労働基準法で定められた時間を超えて社員を労働させるために、使用者と企業の間で締結される協定」のことです。

しかし、36協定は会社側が一方的に締結できるものではなく、下記のような条件を満たしている必要があります。

  • 締結する労働者の代表が民主的な選挙で選ばれていること
  • 36協定が労働基準監督署へと届出されていること
  • 雇用契約書・就業規則に締結内容が書かれていること
  • 就業規則が社員の全員に周知され確認できること

上記の条件を満たしていない場合、36協定は違法になる可能性があります。また、会社側が社員に残業を命じることができません。

劣悪な環境の職場では、上記の条件を徹底できていないケースもあります。該当するかもしれないと感じる場合は、労働基準監督署へ相談することや、専門家への依頼が必須です。

 

2 36協定が締結されていても「週15時間・月45時間を超える残業」は違法

36協定は、先ほど解説した条件を満たしてさえいれば、社員に対して企業側が残業を命令することが可能になります。

しかし、協定を結んだからといって「際限なく残業を命じることができる」というわけではなく、下記のように残業時間の上限が決められています。

協定が締結されている場合の残業時間上限一覧
期間 一般労働者の残業時間の上限 対象期間が3ヶ月を超える
1年単位の変形労働時間制の対象者の残業時間の上限
1週間 15時間 14時間
2週間 27時間 25時間
4週間 43時間 40時間
1ヶ月 45時間 42時間
2ヶ月 81時間 75時間
3ヶ月 120時間 110時間
1年 360時間 320時間

協定が締結されている場合でも、期間ごとに残業時間上限は限定されているため、その上限を超えた場合には違法になります。

この時間を超えて従業員に働いてもらうためには、会社と従業員の代表の間で「特別条項付き36協定」を締結することが必要です。

つまり、特別条項付き36協定が就業規則などに明記されていない場合には、「週15時間・月45時間以上」の残業は、労働基準法上「違法」になります。

 

3 特別条項付き36協定が締結されていれば残業上限を延長可能

特別条項付き36協定では、通常の36協定の残業上限を超えたとしても臨時的・突発的な残業に対して園長時間を確保することができる協定です。

「臨時的・突発的」な残業に対処するために締結するものなので、残業の延長ができる条件がしっかり決められています。

特別条項付き36協定で残業上限が延長できる条件
  1. 具体的に決められている「特別の事情」に該当した場合
  2. 延長する期間が1年の半分を超過していない場合
  3. 労働者に著しい不利益が出る残業ではない場合

月60時間を超える残業が慢性化している場合には、たとえ特別条項付き36協定が締結済みであったとしても、上記の条件に該当しない場合が多いです。

そのため、「うちの会社も当てはまるかも…」と感じる場合、職場を早々に変えることや、労働基準監督署に相談するなどの具体的な手立てが必要です。


ここまで、月60時間を超える残業に悩んでいる方に向け、月60時間残業が違法になるケースを解説してきました。

残業時間が違法のまま働かされているケースも多いため、少しでもおかしいと感じたら専門家への相談をおすすめします。

また、こういった不当な残業が継続的に行われている職場では、「未払い残業代」が発生している場合があります。その場合、残業代を計算しながら未払い残業代を請求する方法についても知っておくべきです。

下記からは、未払い残業代の計算方法や、未払い残業代の請求方法について解説していきます。

 

月60時間を超える残業代の計算方法は?

月60時間を超える残業代の計算方法は?

ここでは、残業代の基本的な計算方法について解説していきます。月60時間を超える残業が慢性的に行われている職場では、気づかないうちに「残業代未払い」が発生している場合があります。

そういった環境で働いて居る人の中には、大きく損をしている人も多いはずです。また、どうやって残業代が計算されているかをよく把握していない人もいるでしょう。

ここで正しい計算方法を学び、未払いが発生しているかどうかを確認してみましょう。

 

1 通常の残業代の計算式

残業代は、下記の計算式で計算することができます。

時間外労働の時間数(時間) × 1時間あたりの賃金(円) × 1.25(割増率) ※1

※1 時間外労働が1ヶ月60時間を超えた場合、超えた分から「×1.5」(中小企業の場合例外あり)

1時間あたりの賃金などは就業規則などで計算する必要がありますが、下記記事で細かな計算方法を確認することもできます。労働基準監督署や弁護士等の専門家に依頼せずに全てを計算したい方は、下記記事を活用してください。

おすすめ記事:残業代の正しい計算方法は?計算式と便利ツールで割増賃金を調べよう

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ただし、すべてをご自身で計算する必要はなく、自動で大まかな計算をしてくれるツールを活用するほうが簡単です。ツールも、上記の計算方法の記事で確認することができます。

 

2 「みなし残業代」で残業代が支払われているときの計算式

「みなし残業代」として、毎月の残業代を固定で支払われている場合、残業代の計算式は少し複雑になります。

みなし残業代があるときの残業代は、下記の計算式で求めることができます。

時間外労働の時間数(時間) × 1時間あたりの賃金(円) × 1.25(割増率) – 固定残業代

みなし残業代で支払われていないことになる時間分の残業代を請求することも可能です。

もし「みなし残業代」で全ての残業代を受け取ることができていない労働環境の場合は、ある程度「未払いがある」ことを明確にした上で、労働基準監督署や専門家への相談をするべきです。

 

3 みなし残業代自体が認められない場合の計算式

みなし残業代(固定残業代)は、会社側にとっても労働者側にとっても場合によって得をする制度ですが、その制度が悪用されないよう、みなし残業が認められるための条件があります。

下記の項目に当てはまる場合には、みなし残業代が認められない分、未払い残業代として請求できる金額が大きく変わる場合があります。

「みなし残業代」として認められないケース

  • 残業代の代わりに営業手当や役職手当などのほかの手当で支払われている場合
  • みなし残業代を除いた時給が最低賃金を下回っている場合
  • 60時間超かの残業に対して残業代をそもそも支払っていない場合

この場合、みなし残業代は認められず、未払い残業代を請求する金額が多くなる場合があります。

細かな計算に関しては専門家や労働基準監督署におまかせするべきですが、みなし残業が多い企業で働いている場合、このようなケースがあることを知っておきましょう。


ここまで、月60時間を超える残業代の計算方法について解説してきました。

残業代の計算は複雑な面が多くわかりにくい人も多いと思います。また、派遣社員の場合や年棒制の場合、日給制の場合などで残業代計算式も異なるため、働き方に応じた計算を行う必要があります。

ご自身で計算したい場合は、残業代の計算式を様々なケース別にまとめた記事があるので、そちらも参考にしてください。

また、残業代計算は労働基準監督署の相談コーナーや弁護士等の相談でも受け付けている場合が多いです。自分で計算することに不安がある方は、そういったところでまず相談してみることをおすすめします。

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