未払い残業代の請求方法と手順!転職前にできることはあるの?

未払い残業代の請求方法と手順!転職前にできることはあるの?
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「未払い残業代を請求したい」…転職などで今の職場から離れる理由のひとつに「まともに残業代を支払ってくれない」という悩みがあったのではないでしょうか。あなたが働いた分、本来であれば受け取れる残業代の割増賃金を受け取れないのは、労働基準法上「違法」です。

そのため、あなたがしっかり未払い残業に関する知識を身に着け対策を講じることで、2年の時効以内の未払い残業代を請求することができます。

今回は、「未払い残業代とはそもそも何か?」という基礎部分から出発し、転職前に対策を講じて置きたい未払い残業代の請求方法や流れを解説していきます。

最終的には、弁護士などの専門家に依頼することが望ましいですが、自身で請求方法を知っておくとそれだけスムーズに物事が進みます。今回の記事を参考にして頂き、未払い残業代の請求方法をぜひ学んでくださいね。

未払い残業代とは|支払われなかった残業代は受け取れるの?

未払い残業代とは|支払われなかった残業代は受け取れるの?

「未払い残業代」とは、会社が従業員(労働者)に対して支払う義務のある残業代(時間外労働手当)のうち、支払っていない残業代のことを指します。

残業代の未払いは、賃金の支払い義務を怠る行為として、民事上・刑事上の責任が問われることが「労働基準法」にて定められています。

参考:労働基準法 – e-Gov

労働問題には、残業代未払い以外にも様々なものがありますが、労働環境や労使問題が増加し続けていることが、国の労働紛争解決制度の施行状況から知ることができます。

総合労働相談、助言・指導申出、あっせん申請の件数はいずれも前年度と比べ増加。総合労働相談件数は113万741件で、9年連続で100万件を超え、高止まり[P.3 1-(1)]

引用:平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況 – 厚生労働省

最近では、「ブラック企業」の問題が表面化してきていることで、弱い立場である「従業員」が不当な立場・境遇に追いやられてしまっている現状を解決しやすくなってきています。

そのため、残業代の未払いなどの問題に関しても、「未払い残業代の請求」と言う形で対処することができます。

ただし、未払い残業代請求の時効は2年という短い期間に設定されています。できる限り早く行動を起こすことが、未払い残業代を減らさずに請求する唯一の方法です。

 

未払い残業代の請求とは?|必要な準備と証拠となる資料を知る

未払い残業代の請求とは?|必要な準備と証拠となる資料を知る

未払い残業代の請求とは、あなたがこれまで職場で受け取れるはずだった「残業代」のうち、正当に支払われていない分の金額を計算し、その証拠を提示した上で請求額を受け取ることです。

未払い残業代の請求では、ただ「未払い分があるので支払ってください」と企業側に依頼するだけでは対応されないケースがあります。

そのため、事前に証拠を集めた上で未払い残業代の請求をおこなう必要があります。

下記では、証拠として準備すべき書類と証拠にならないものについて解説していきます。今のうちから、請求で活用できる書類・準備物をしっかりおさえておきましょう。

 

未払い残業代の請求で証拠となる書類

未払い残業代の請求をおこなうときに「証拠」として扱われる書類は下記の通りです。

1 雇用時に交付される書類

雇用時に交付される書類は、下記の3つの資料のうち、いずれかになります。

  • 雇用契約書
  • 労働契約書
  • 雇用通知書

企業は従業員を雇う際に「労働基準法第15条と労働基準法施行規則第5条に定められた事項が記載された書面」を交付する義務があります。

その事項には、給与の計算方法や残業代支給についての取り決めが記載されています。

 

2 就業規則のコピー

就業規則は、企業側が従業員に対して「会社の決まり」を示すための文書です。就業規則は、労働者が10人以上いる職場では必ず作成・周知する義務があります。

作成と届け出・周知義務は、下記の法令で定められています。

  • 労働基準法第89条(作成及び届出の義務)
  • 労働基準法第106条(法令等の周知義務)

出典:労働基準法 – e-Gov

また、従業員(労働者)がいつでも閲覧できるようにされている必要があります。

就業規則には、「就業時間」「時間外労働」「休日」など、従業員が働くにあたって欠かせない情報が含まれているため、残業代請求のときの根拠として必要になります。

 

3 士業・就業時間を立証するための資料

未払い残業代を請求するためには、支払われていない残業代の金額を従業員側が立証する必要があります。

具体的な計算に関しては、相談窓口などに相談しつつおこなうことができます。

しかし、資料自体は自分で準備する必要があるため、具体的な資料を確保しておくことが大切です。

 

立証するための資料は下記の通りです。

  • タイムカード・勤怠記録・日報
  • Eメールなどの送信記録履歴
  • 帰宅時のタクシー領収書
  • 日記など毎日のメモ

 

「この時間まで働いていた」ことの証明になる記録としては、メールなどの細かな情報も根拠になります。

残業代請求などの可能性が少しでもあるのであれば、むやみに削除したりせず、保存しておくことが大切です。

 

4 残業時間中の労働内容を立証する資料

残業時間中、具体的にどのような業務を行っていたかを証明することも、残業代請求では必要になります。

つまり、単なる会社への居残りなどでは残業代を請求できないため、残業時間中に仕事をしていたことを立証する責任が請求者側に発生するのです。

残業時間中の労働内容を立証できる資料は下記の通りです。

  • 残業指示書・残業承諾書:メール、メモ、残業承認の書類など
  • 残業時間中の業務用メール
  • 残業時間中の業務が記録されている業務日誌など

上司から残業の指示を受けていたことが明らかな資料や、残業時間中の労働を示すメールなどのやり取りから、残業時間中の労働を立証することができます。

 

未払い残業代の請求の証拠になりにくい書類

未払い残業代の請求をおこなうときに「証拠」として扱われない書類は下記の通りです。

1 単なる走り書きの不正確な内容のメモ

日記や日報などのメモは、残業代請求をおこなうときの証拠になりえます。

しかし、内容や主旨が不明確な走り書きのメモや、ほかの証拠と一緒に見たときにズレが大きいメモは、確実な証拠として判断されないことがあります。

毎日定期的に同じ形式できちんと書かれたメモであれば証拠としての信ぴょう性・正確性があります。そのため、残業のたびにメモをするのであれば形式を決めて継続的に書くことが大切です。

また、書き直しや修正は証拠として不正確になるため絶対にやめましょう。

 

2 私的な連絡・メール

会社のPC・端末から送信したメールは証拠になります。しかし、内容によっては証拠の価値が低いと判断されます。

たとえば、友人・知人等に送信したメールなどは、労働時間の計算や業務内容を立証するために重要な情報にはなりません。

ただし、残業に関する相談など、残業代請求と密接に関わる情報のやり取りをしていた場合は例外なので、自身で判断するのではなく専門家へ相談するべきです。

 

証拠が準備できないが未払い残業代を請求したい場合

「証拠となる書類」を準備することで、有利な立場で未払い残業代請求を企業側に対して求めることができます。しかし、中にはすでに退職済みで必要な書類を準備できない方もいるでしょう。

その場合でも、未払い残業代請求をおこなうことは可能です。

その場合には、下記の流れで未払い残業代請求の準備をしていくことになります。

証拠が準備できない場合の未払い残業代請求の流れ

  1. 企業に対して証拠となる資料を請求すること
  2. 請求した資料に基づいて専門家へ相談すること
  3. 未払い残業代請求の可否を判断してもらうこと

つまり、未払い残業代請求をおこなう企業側に対して、従業員は必要な書類を請求することができます。

その根拠は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」と呼ばれる厚生労働省通達と、「労働基準法第109条」に定められています。

使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。

引用:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準 -厚生労働省

労働基準法第109条(記録の保存)

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。

引用:労働基準法 – e-Gov

労働時間の管理は企業(使用者)の義務であるため、「労働時間の記録を3年間保存すること」も企業側の義務です。そして、労働者側は企業に対して「労働時間の記録資料」を要求することができます。

最初に残業代請求に必要な書類を企業側へ請求し、その書類を証拠として残業代請求をおこなうことができます。

しかしこの場合でも、請求するあなたに立証責任があることは変わらないため、確実に請求が通るかどうかは専門家へ任せることが大切です。


ここまで、残業代請求に必要な準備と証拠となる資料をご紹介してきました。

残業代請求では、あなた自身が準備すべきものや注意すべきものも多いため、上記でご紹介した内容を参考に少しずつ準備しておきましょう。

更に下記では、未払い残業代請求の具体的な手順と方法について触れていきます。

 

未払い残業代の請求手順・方法・流れ

未払い残業代の請求手順・方法・流れ

未払い残業代を企業側に請求する場合、その方法には様々な手法があります。また、請求する企業側が、連絡や対応をどのように取ってくれるのかによっても変わります。

ここでは、様々な手法に分けて残業代請求の手順と流れを解説していきます。

 

1 会社と直接交渉する

残業代を請求する企業側が法令遵守意識を持っており、何らかの不備で残業代が支払われていなかった場合には、従業員と企業との話し合いで解決することもあります。

しかし、在職しながら会社と直接交渉するのは簡単なことではないため、できそうにない場合にはムリに行う必要はなく、弁護士等を通して請求したほうが良い場合が多いです。

直接交渉は、下記の内容がかかれている書類を企業側へ送ることでおこなうことができます。

会社側が反応してくれない場合には「内容証明郵便」を送る方法があるため、無反応な場合でも諦めるのはまだ早いです。

交渉として送る書面内容

  • 提出日時・名前
  • 業務内容(部署名・業務)
  • 残業代が支払われていない期間
  • 残業代の請求金額
  • 未払い残業代の根拠・計算
  • 交渉したいという旨の連絡
  • 対応してほしいという旨の記載

これらを書面やメールを通して上司・企業側に送信します。(すでに退職している場合には企業の担当部署へ連絡する)

直接の話し合いを含めたやり取りを行う場合には、書面の控えや録音など、証拠として明らかになるように保存しておきます。

交渉が決裂した場合には裁判による交渉が必須なため、あらかじめ予期しておくことが大切です。

 

2 労働基準監督署に相談・申告する

労働問題・労使問題への相談窓口を設置している労働基準監督署に対して、残業代の計算や匿名申告を依頼することができます。

費用が発生せず、証拠として活用できるものや相談も受け付けてくれるため、細かい準備や行動ができないまま悩んでいる方は、まず最寄りの労働基準監督署に相談することをおすすめします。

地域の労働基準監督署は下記URLより検索することが可能です。

 

3 通常訴訟で残業代請求をおこなう

裁判所に直接訴えを起こすことで未払い残業代を請求する方法です。

自身で訴訟を起こすには多くの準備が必要なため、裁判所で訴訟をおこす場合には弁護士に依頼します。

弁護士費用や個人情報開示が必要なため、最初に労働基準監督署の相談窓口へ相談したり、弁護士事務所への無料相談を受けることをおすすめします。

弁護士に訴訟依頼をおこなうメリットは下記の通りです。

弁護士に未払い残業代請求訴訟を依頼することのメリット

  1. 労働基準法上の「割増賃金」と同額の付加金の請求が可能である。
  2. 遅延損害金(退職前:年6%、退職後:年14.6%の割合)が請求できる。

 

4 労働審判で未払い残業代請求をおこなう

労働審判の特徴としては,裁判官(労働審判官)だけでなく,労働問題に精通した専門家(労働審判員)が参加し,柔軟な解決が図りうること,3回の期日までに終了しなければならないとされているため,訴訟に比べて迅速な解決が図りうることなどが挙げられます。

引用:各種の紛争解決手続 – 未払賃金・残業代請求ネット相談室

通常の訴訟よりも短時間で解決することが可能な労働審判制度を利用する方法もあります。

訴訟を起こす前には、比較的柔軟かつ短時間で解決することができる「調停」や労働審判制度を活用することになります。

この場合も、弁護士などの専門家に依頼することになります。


ここまで、残業代請求の方法について解説してきました。会社側との直接的な交渉以外では、基本的に労働基準監督署や弁護士などの専門家に依頼することにより、入念な準備のもと請求することができます。

弁護士に直接依頼する前に、「残業代を計算したい」という人は、まず労働基準監督署に相談するか、「未払い残業代の計算」を行ってみましょう。

下記記事では、残業代計算の方法やツールについて解説しています。

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2018.01.22
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