未払い残業代の請求方法と手順!転職前にできることはあるの?

未払い残業代の請求方法と手順!転職前にできることはあるの?
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未払い残業代請求を依頼できる士業は?

未払い残業代請求を依頼できる士業は?

未払い残業代の請求においては、弁護士以外にも「司法書士」「社会保険労務士」「行政書士」など、様々な分野の士業からのサポートを受けることができます。

しかし、料金や回収できる残業代、依頼できる内容などは士業によって細かく異なるため、自身の必要性に併せて最適な相談相手を見つけることが求められます。

下記の一覧表では、各士業によってできること・できないことをまとめています。

士業別の業務代行可否一覧表

書類作成 会社との交渉 労働審判 裁判代理
簡易裁判所 簡易裁判所以外
弁護士
認定司法書士
司法書士
特定社会保険労務士
社会保険労務士
行政書士

 

1 弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼することによるメリットは、「すべての作業を代行してくれること」です。

交渉材料を自分自身でほとんど準備できていない方や、自身で交渉する機会をできるだけ減らした上で残業代を請求したい場合には、弁護士に依頼すると良いでしょう。

ただし、ほかの士業と比較すると「成功報酬は回収額の20〜30%」と高額になります。

 

2 司法書士に依頼するメリット

司法書士には「簡易裁判所の訴訟代理権」が認められているだけであるため、表の通り認定司法書士であっても地方裁判所での訴訟や先に説明した労働審判などで代理人になることはできません。

裁判所への書類作成・裁判手続きなどをしてくれるため、訴訟以外の手続き面を依頼したい場合に利用します。

認定司法書士であれば、「請求金額が140万円以下」かつ「簡易裁判所での訴訟」であれば、弁護士と同様に訴訟代理人として残業代請求手続きを代行してくれます。

報酬も「回収額の10%」程度であるため、金額が140万円以下で簡易裁判所で訴訟を行う場合に依頼しましょう。

 

3 社会保険労務士に依頼するメリット

社会保険労務士は、弁護士や司法書士のような代理人としての役割を担うことはできません。一方で、内容証明の作成などの書類手続きをおこなうことができます。

また、特定社会保険労務士であれば「ADR(裁判外紛争解決手続)」をおこなうことができます。裁判外で残業代請求を解決する代行・交渉を行ってくれる点がメリットです。

弁護士や司法書士がおこなう訴訟と比べて拘束力がないため、労働問題に関する相談を士業へしたい場合には、まず社会保険労務士事務所を利用することをおすすめします。

相談であれば数千円、企業との交渉費用は1万円程度です。

 

4 行政書士に依頼するメリット

行政書士の役割は、役所等へ提出する申請書類の作成や提出代理、契約書の作成などを業務としています。

残業代請求の際の内容証明の作成を依頼することができるため、自分自身で訴訟を進めたい人は行政書士に依頼すると良いでしょう。内容証明の作成は1万円ほどで請け負ってくれます。

ただし、訴訟に関して不安が残る方は行政書士のサポートだけでは不足する場合があります。


ここまで、未払い残業代請求でサポートしてくれる士業の特徴や範囲、メリットを解説してきました。あなた自身がどの程度訴訟や請求手続きをおこなうかによって、依頼すべき士業も変わります。

ただし、相談しないと状況が分からない方も多いでしょう。まずは労働基準監督署等の相談コーナーで具体的な残業代を計算した後に、必要に応じて士業事務所へ相談するとスムーズです。

下記からは、実際に未払い残業代を請求する際の様々な注意点に関して解説しています。

 

未払い残業代を請求する際の注意点は?|どんなときに請求すべきか

未払い残業代を請求する際の注意点は?|どんなときに請求すべきか

ここでは、未払い残業代を請求しようとしている方に向けて、請求前や請求時に知っておきたい注意点を解説しています。

あなたの状況によっては、個別具体的に対処しなければならないトラブル原因があるかもしれません。ざっと眺めてみて、あなたに当てはまるケースがないか、確認してみましょう。

また、請求するかどうか悩んでいる人も、目を通してみてください。

 

1 残業代は出ないことを会社から明言されている

残業代が出ないことに悩んでいる方の中には、会社側から明確に「残業代が出ない」ということを伝えられているケースがあります。

たとえば、下記のようなケースに当てはまっている人も多いのではないでしょうか?

  • 残業代がそもそも出ない/出せないことを説明された。
  • 雇用契約の内容に「残業代が出ない」ことが書かれている。

こういった理由があったとしても、企業側からの説明の有無に関わらず、残業代を請求する権利があなたから消えるわけではありません。また、残業代がまったく出ない雇用契約は無効になります。

そのため、「最初から請求することは無理に決まっている」と決めつけず、未払い残業代に関する問題を解決するために行動していくことが大切です。

 

2 タイムカードの記録なしで残業させられている

「タイムカードなどの記録が残っていないため、残業代は請求できない」と考えてしまっている方も多いようです。しかし、この記事でいくつか説明したように、タイムカード以外でも残業が発生していることの根拠を探すことは可能です。

会社は実態にあわせた残業を支払う義務があるため、タイムカード以外の証拠をもとに残業代請求をおこなうことができるのです。

ただし、1人だけ会社の雰囲気に流されず残業をしない・残業を申告することは難しい場合が多いです。

この場合、後々の残業代請求を念頭においておき、退勤時刻を証明するメールや業務日誌、タクシーの領収書などを保存しておきましょう。

 

3 残業時間上限の超過分がカットされている

あらかじめ会社側で勝手に残業時間を設定し、それを超えた分の残業をカウントしない会社もあるようです。

残業代は勝手に基準を作り変えることができるものではないため、残業代請求をおこなうことは可能です。

 

「超過分はそもそも請求できない」「我慢するしかない」と考えている方は、その考えをやめて、きちんと残業時間・残業中の業務内容を示す証拠を準備しておくことが大切です。

そのほかにも、勝手に残業代をカットするケースには下記のようなものがあります。

  1. 年棒制であることを理由に残業代をカットする。
  2. 会社ではなく家で残業しろと言われる。
  3. 管理職であることを理由に残業代がカットされる。
  4. 残業時間を切り捨てられる。
  5. みなし労働制を理由に残業代が出ない。

様々な理由を背景に、「残業代を支払わない」という問題が発生しがちですが、ほとんどの場合残業代は発生します。そのため、泣き寝入りをすることは極力避けて、不当に残業させられないために対策を練る必要があります。

まずは、自分の働き方・残業の仕方であれば、本来どの程度残業代を受け取ることができるのかを計算してみましょう。

様々なケースの残業代計算は、下記記事でご紹介しています。

おすすめ記事:残業代の正しい計算方法は?計算式と便利ツールで割増賃金を調べよう

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2018.01.22

 

4 残業代未払いが多い業界を知る

未払い残業代はどんな職種・業種・業界であっても発生するものですが、「残業代未払い」が常態化している業界を知ることも大切です。

たとえば、自分が属している業界が、「残業代未払いが多い業界」で合った場合には、事例などを含めて他の人を参考にして未払い残業代請求を進めることができますよね。

下記では、残業代未払いが多い業界を一覧でまとめています。

残業代未払いが多い仕事・業界一覧

  • 工事・土木業界
  • IT・Web
  • 飲食業界
  • アパレル業界
  • 講師などの教育業界関係の仕事

業界全体を通して残業が慢性化している業界としては、「IT・Web」が根深いといえます。また、体育会系の社員が多い業界などは、残業代未払いが多いです。

その他、少人数経営の職場などでも未払い残業代が発生するリスクが高いです。


ここまで、未払い残業代を請求する前に知りたい様々な注意点を解説してきました。

「どうせ回収することはできない」と考えてなにもしないのではなく、無料相談を含めた行動を起こしていくことが大切です。

 

ケース別に考える残業代を請求できる場合・できない場合

ケース別に考える請求できる場合・できない場合

「残業代が正しく支払われていない」と感じる方の中には、「自分自身で計算する方法が分からない」という方も多いはずです。

特に「裁量労働制」など少し特殊な勤務形態で働いている人などは、実際に未払い残業代が発生しているのかどうかがわからない場合もあるでしょう。

ここでは、様々なケースから「残業代請求ができるかどうか?」をまとめました。

自信に当てはまるケースから参考にしてください。

具体的な計算方法は「残業代の計算方法に関する記事」に記載しています。

 

1 みなし労働時間制・裁量労働制

みなし労働時間制(裁量労働制)では、「みなし労働時間」を超えた分について残業代を請求することができます。

裁量労働制は、事前に決めた時間(例:1日8時間)をもとに実際の労働時間に関係なく給与が支払われる制度です。しかし、みなし労働時間を超えた分については、残業代として請求することが可能です。

また、みなし労働時間制・裁量労働制を会社で適用するには、下記のルールを守っていることが必須条件です。

みなし労働時間制(裁量労働制)のルール

  1. 36協定を労使間で締結していること
  2. 企業が36協定を締結している旨を労働基準監督署に提出していること
  3. 時給が最低賃金を下回っていないこと

この条件を適切に満たさずに制度を使用している場合、それを無効として残業代を請求することができます。

 

2 固定残業代

固定残業代とは「あらかじめ給料に残業代を設定し、固定の金額を必ず支給すること」を指します。しかし、いくら残業しても固定額のみ払われない…というわけではありません。

就業規則では、固定残業代を設定するときに必ず「1ヶ月あたり○○時間」と残業時間が決められています。この残業時間を超えた場合には、固定残業代とは別に残業代が発生します。

むしろ、固定残業代を定めるときには、「固定残業代の金額がしっかり区分されていること」「何時間分の残業が固定なのかが明確であること」が必要です。

よって、残業がまったく発生しない固定残業代制度は「無効」になります。

 

3 年俸制

年棒制ではあらかじめ年俸に残業代が含まれていることがほとんどです。契約内容には、「1ヶ月○○時間、○万円分の残業代を含める」と書かれています。

つまり、ほかの給与体系と同じように、定められている以上の残業が1ヶ月に発生した場合などは、残業代を請求することができます。

 

4 管理職・名ばかり管理職

労働基準法では、「管理監督者(管理職)には割増賃金を支払わなくて良い」ことが規程されています。しかし、それはあくまで特定の条件を満たした管理職に限定されます。

「名ばかり管理職」は、実際の権限はほとんどほかの従業員と変わらないのにも関わらず、残業代が発生しないという問題で、今もこのような問題に悩まされている人も多いです。

名ばかり管理職として支払われていない残業代を請求するためには、「名ばかりで実態がない管理職であること」をきちんと立証する責任があります。

そのため、労使問題を扱う専門家や相談窓口に相談することをおすすめします。

 

5 派遣社員

派遣社員というと、「残業代が出ないのは当たり前」というイメージを持っている方も多いと思います。実際、そのように考えている方も多いでしょう。

しかし、派遣社員でも労働基準法は適用されるので未払い残業代を請求することは可能です。

未払い残業代が発生しているかどうかは計算する必要がありますが、サービス残業などの実態が派遣先である場合、まずは派遣元に相談します。

その後、対応に不備がある場合などに相談をすることがベストな方法です。

 

6 退職後

会社を退職したあとに残業代を請求する場合には、できる限り早く行動することをおすすめします。

というのも、記事冒頭で解説した通り、残業代請求は2年の時効があるため、時期が遅れれば遅れるほど、請求できる金額が減っていくからです。

退職した場合には「遅延損害金」を請求することもできるため、労働基準監督署へ相談後、遅延損害金を含めた金額を請求することが可能です。


ここまで、様々なケースで未払い残業代を請求できる場合とできない場合をご紹介してきました。

ご紹介した内容に該当する場合には、計算上「未払い」となる範囲について請求することができます。

時期はできる限り早いほうが良いため、特に退職後に残業代を請求する場合には転職活動などを含めて積極的に行動していきましょう。

 

転職するなら「転職エージェント」を活用しよう

おすすめ転職エージェントランキング!選び方や注意点・活用法まとめ

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今回の記事では、未払い残業代の請求方法について詳しく解説してきました。未払いの残業代・割増賃金分を請求するには、専門家への依頼が必須です。

しかし、それとは別に「残業が少ない職場へ転職したい」「残業代がしっかり出る職場で働きたい」と考えることも大切です。転職時に今回ご紹介した注意点や知識を活用することが求められるでしょう。

転職活動時にしっかりと残業代を受け取ることができ、慢性的な長時間労働が発生しない職場を選ぶためには、あなた自身が注意するだけでは不足する可能性があります。

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2017.12.25

 

おわりに|不安なときは専門家に依頼することがベスト

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今回は、「未払い残業代とはそもそも何か?」という基礎部分から出発し、転職前に対策を講じて置きたい未払い残業代の請求方法や流れを解説してきました。

未払い残業代は、正当な方法で請求することができる労働者の権利です。しかし、転職後の手続きややることの多さで、つい請求を諦めてしまいがちです。

手間をできるだけ少なくしつつ請求する方法があるので、今回の記事を参考にして頂き、未払い残業代の請求をスムーズに進めていきましょう。

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