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勤務形態別の残業代計算方法|裁量労働制・管理職・日給制・変形労働時間制
通常の労働時間制とは異なる労働形態で働いている場合でも、残業代を計算し請求することは可能です。
しかし、通常の場合とは異なり、計算方法に細かな違いがあります。
そのため、あやふやになってしまっている人も少なくありません。残業代に関して損をしてしまうことがないように、自分に当てはまる労働形態別に計算方法を見ていきましょう。
1 裁量労働制(みなし労働時間制)
裁量労働制(みなし労働時間制)は、「1ヶ月の実働時間の合計がみなし労働時間を超えた場合」に残業代が発生します。
裁量労働制では、事前に決めた時間働いたとみなす勤務体系です。そのため、「1日8時間」と労働時間を決めていた場合、労働時間が5時間の日も、10時間の日も「8時間労働」とみなされます。
しかし、1ヶ月の実働時間の合計がみなし労働時間として決めた時間を超過した場合には、残業代として割増賃金が発生することになります。
計算式は下記の通りです。
裁量労働制(みなし労働時間制)の残業代計算式
1時間あたりの賃金 × みなし労働時間を超えて働いた時間 ×1.25(法定労働時間外労働の割増率)
また、深夜労働・休日出勤の割増賃金も発生するため、状況に応じて計算します。
裁量労働制は、それを従業員に課す企業側が厳しい基準を乗り越えて定めることができる労働時間制度なのです。
そのため、サービス残業などが常態化している企業で働いている方は、そもそも「みなし労働時間制なのか?」をきちんと確認することが大切です。
2 管理職
労働基準法では、「管理監督者(管理職)」に対しては残業代や休日出勤手当を支払わなくて良いという規程があります。
しかし、それはあくまでも労働基準法上の管理監督者の条件を満たした場合に限るため、企業側が一方的に「管理職」と任命しただけでは強制力はありません。
つまり、問題になっている「名ばかり管理職」として扱われている場合には、本来残業代を受け取ることができます。
労働基準法上の管理監督者(管理職)の条件は下記の通りです。
- 経営方針の決定などに参画していること
- 労働者に対して管理監督・指揮命令・採用などの権限を持っていること
- 出退勤に関して規制を受けず勤務時間を自由に決めることができること
- 職務の重要性から見て「役職手当」が支給されていること
つまり、管理職として実質的な権限を持っているかどうかで、名ばかり管理職かどうかを判断することができます。
もし、名ばかり管理職であることを根拠に残業代請求をしたい場合には、専門家や窓口への相談をおこなうことが必要です。
管理監督者の場合に請求できる割増賃金
労働基準法上の管理監督者の場合、残業という概念がないため、時間外労働や休日労働についての割増賃金を受けることはできません。
しかし、「深夜労働」については、割増賃金(25%)を受け取ることができます。深夜労働であれば、休日労働のうち深夜労働に当てはまる部分については割増賃金の対象です。
3 日給制
日給制の勤務体系で働いている場合、残業代の計算は月給制と同じ計算方法で計算することができます。
つまり、法定労働時間(8時間)を超えた時間と、所定労働時間で割った日給額をかけることで計算することができます。
たとえば、下記のケースで日給制の残業代を計算してみましょう。
- 日給:12,000円(契約時の日給額)
- 1日の所定労働時間:7時間
- 実働時間:9時間
時給 = 12,000円 ÷ 6時間 = 2,000円 として残業代を計算していきます。
- 6〜8時間までの3時間分の残業代:2,000円 × 2時間 = 4,000円
- 8〜9時間までの1時間分の残業代:2,000円 × 1時間 × 1.25(時間外労働割増) = 2,500円
- 残業代合計額:4,000円 + 2,500円 =6,500円
つまり、日給+残業代としてあなたが受け取れる金額は18,500円になります。
日給制の場合でも、時給への換算をおこない所定労働時間を知ることができれば、すぐに残業代を計算することができます。
もし、企業・雇用主側が対応してくれない場合には、相談窓口へ相談してみることをおすすめします。
4 変形労働時間制・フレックスタイム制
変形労働時間制とは、労働時間の基準を月単位・年単位で計算する制度のことです。
つまり、1日に何時間働いても制限はなく、月・年単位で合計の労働時間が基準を上回っていなければ、残業をしていることにはならないという制度です。
対して、フレックスタイム制とは「定められた労働時間の中で、労働者が自由に出社・退社時間を決めることができる」という制度です。
変形労働時間制のうちのひとつですが、制度として利用されていることが多いです。
変形労働時間制・フレックスタイム制では、労働時間の基準を「清算期間」として定めます。
精算期間内に一定以内の労働時間で働くことさえできれば、どのような労働時間の確保の仕方をしても構わない制度です。
変形労働時間制では、清算期間(1年・1ヶ月)に関わらず、「週の労働時間の平均が40時間を超えていないか」が残業代発生基準になります。
所定労働時間の残業代が発生する基準を表でまとめて解説していきます。
清算期間 | 1ヶ月/1年の日数 | 所定労働時間の合計の上限 |
---|---|---|
1ヶ月 | 28日 | 160.0時間 |
29日 | 165.7時間 | |
30日 | 171.4時間 | |
31日 | 177.1時間 | |
1年 | 365日 | 2085.7時間 |
366日(うるう年) | 2091.4時間 |
「所定労働時間合計の上限を超えた時間数 × 1.25」が、残業代として計算されます。
ここまで、勤務形態別の残業代計算方法を解説してきました。
労働形態により計算方法や残業代の細かな定義が異なるため、上記に当てはまる働き方をしている場合には、残業代請求や残業代未払いの情報収集を間違えないようにしましょう。
残業代を計算できる便利ツールまとめ
この記事では、残業代に関する計算方法や計算式、残業代や深夜・休日労働の割増賃金に関する定義を解説してきました。
未払い残業代請求の準備や、給料の内訳を確認するために計算式を活用することができますが、「できるだけ早く目安額を知りたい」という人も多いはずです。
そこでここでは、残業代計算をすぐにおこなえるツールをご紹介しています。スマホやWebブラウザ上で利用できるものもあるため、簡単に残業代計算をしたい方はぜひ活用してください。
1 残業代の計算 – Keisan
残業代の簡易的な計算ができる「Keisan」では、深夜労働や法定休日、月60時間超の割増の有無を入力し、残業代の適性金額の目安を知ることができる計算ツールが提供されています。
入力するだけで簡単に計算を済ますことができるため、できるだけ簡潔に残業代計算を行いたい場合に活用しましょう。
2 残業代計算ソフト「給与第一」
京都第一法律事務所が開発した残業代計算ソフト「給与第一」は、Excel専用の計算ソフトです。裁判所でも利用されているソフトで、訴訟資料としても利用できる点が大きな特徴です。
「計算規則」「基礎時給計算書」「時間計算書」「割増賃金計算書」「労働時間認否・認定書」を訴訟資料として準備することができるため、残業代請求の準備をご自身で行う場合にも重宝します。
3 残業証明アプリ(iPhone・Android)
iPhone・Androidスマートフォンで利用できる「残業証明アプリ」では、残業代請求をおこなうことのできる「2年分」の残業記録を取ることができるアプリです。
GPS機能で残業したかどうかを記録し、残業代まで自動で計算してくれます。企業に対して残業代を請求する場合の法的証明になるため、活用できるシーンが多いです。
4 タイムカード(Android)
勤怠入力していくだけで、月の稼ぎを一瞬で把握
アプリを開かなくてもウィジェットから勤怠入力
残業時間や深夜時給の自動適用に締め日登録で楽々給料計算
出勤・退勤時間を記録することができ、記録をもとに自動で残業代を計算してくれるタイムカードアプリです。残業時間や深夜時給の自動的な計算も行ってくれます。
アルバイト・パートなどで働いている方の勤怠管理ツールとしても利用できるため、時給計算などをたまにする人はぜひインストールしておきましょう。
残業代を請求する方法は?
残業代を請求するためには、「労働基準監督署への相談」や「総合労働相談コーナー」をまず最初に活用することをおすすめします。
労使問題・労働問題に詳しい弁護士などの専門家に依頼する方法もありますが、「残業代請求ができるケースがどうか分からない」といった場合、突然専門家へ相談することに気が引けてしまう場合もあるでしょう。
労基や相談コーナーであれば、具体的な対処法についても相談にのってくれるため、まずは最寄りの労基や相談コーナーを利用することをおすすめします。
転職するなら参考にしたい「転職エージェント」
今回の記事では、残業代や休日・深夜労働の割増賃金の定義や計算方法について、詳しく解説してきました。
未払いの残業代・割増賃金分を請求するには、専門家への依頼が必須です。
しかし、それとは別に「残業が少ない職場へ転職したい」「残業代がしっかり出る職場で働きたい」と考えることも大切です。転職時に今回ご紹介した注意点や知識を活用することが求められるでしょう。
転職活動時にしっかりと残業代を受け取ることができ、慢性的な長時間労働が発生しない職場を選ぶためには、あなた自身が注意するだけでは不足する可能性があります。
そんなときに頼りになるのが、業界情報や企業情報の実情を教えてくれたり、あなたにあった企業求人を紹介してくれる「転職エージェント」です。
今では、30代の4人に1人が「転職経験アリ」という事実もあります。転職は決して珍しいことではないのです。
下記記事では転職エージェントに関する基礎知識や選び方をご紹介しているので、転職を検討している人はぜひ参考にしてください。
おわりに|自分の残業代をきちんと把握しておこう!
今回は、残業代や時間外労働分の割増賃金計算に関する基礎知識を解説してきました。
残業代・時間外労働手当の計算方法は、労働形態や企業ごとの就業規則によってケースが大きく異なるため、計算などに難しさを感じる場合があるかもしれません。
ただし、大まかな目安として今回ご紹介した知識を知っておくだけでも、残業代請求や転職活動時に役立てることができます。
今回の記事をぜひ参考にして頂き、残業代請求や転職活動を有利に進めてくださいね。