「渉外」とは、どのような仕事内容なのでしょうか?
また、企業内でどのような役割を果たす職種なのかについても、渉外担当が周りにいなかったり、関わりがなかったりすれば、知ることはなかなか難しいです。
渉外は百貨店や金融機関などの業界のほか、販売代理店を通じて自社商品・サービスを拡販している企業にも存在する職種になります。
しかし、その仕事内容や求められるスキルには共通点がありますから、これから渉外担当として働くことを考えている方は、その共通点を知っておくべきでしょう。
そこで今回は「渉外」の本来の意味や定義について触れながら、企業内で活動する渉外担当(渉外職)の仕事内容と役割、求められるスキルについて解説していきます。
「転職活動を始めたい」と少しでも考えている方は、ぜひ下記記事をご覧ください。
INDEX
「渉外」の意味とは?
「渉外」とは、主に外部の企業や関係者と連絡を取り合ったり、営業職のような交渉をおこなうことを指します。
「渉外係」「渉外担当」という肩書きで仕事をします。
渉外の辞書的な意味合いは下記の通りです。国内の法律事項が外国にも関係することにも「渉外」という言葉が使われますが、一般的な言葉としてはビジネスシーンにおいて使われる渉外が浸透しています。
1 外部と連絡・交渉すること。「渉外係」
2 ある法律事項が、国内だけでなく外国にも関係すること。
引用:渉外 – コトバンク
また、リクルートエージェントの解説によれば、渉外担当の仕事は営業と同じものが多いと言われています。
渉外とは、外部と連絡・交渉する仕事。優れた聞き手を示す言葉でもあり、営業と同様、顧客の要望を聞き、それに応える提案を行っていく仕事をいう。例えば、百貨店において得意個人顧客を担当し、商品提案や様々なサービスを提供していく仕事、金融機関において富裕顧客を担当し、外貨預金や国債、投資信託、年金商品の販売を通し、資産運用をお手伝いする仕事などがある。渉外は特定の業界企業が使うケースが多いため営業ほど聞き馴染みはないが、業務内容は営業に非常に似ている。
百貨店のスタッフが特定個人(「お得意様」などと呼ばれます)に対して、商品の提案をおこなったり、金融機関が特定の富裕層に資産運用サポートをする仕事も「渉外」になります。
ただ、同じような仕事内容でも業界によって「渉外」「営業」のどちらの名前で呼ぶのかには大きな差があります。
ただし、のちほど説明するように営業職よりも広範囲の仕事を取り扱うのが渉外担当の特徴といえるでしょう。
また、企業によっても渉外担当の仕事内容や業務範囲、役割は大きく異なるため、渉外担当への転職を考えるときには、求人ごとの仕事内容をよく確認したうえで、職場を決めることをおすすめします。
基本的には、営業職以上に様々なやり方・方法で会社の外部関係者や顧客を訪問する仕事、提案型営業のような仕事をおこなうのが「渉外担当」といえば良いでしょう。
渉外と交渉との違い
渉外と似ている言葉には、「交渉(こうしょう)」があります。
交渉とは、「相手と話し合って物事を取り決めること」「関係・関わり合い」という意味を持つ言葉です。
意味の違いとしては、渉外の意味自体に「外部と連絡・交渉すること」が含まれていることから、渉外の役割の一部に交渉が含まれていることがわかります。
渉外とは、社内から社外の関係者へ連絡したり、物事を取り決めるために話し合いをする仕事自体を指す言葉として用いられます。
一方で、交渉とは、仕事に限らず日常生活におけるものも含め、「何かを決めるために相手に条件や決める内容について相談・話し合いすること」という意味で広く用いられる点が特徴です。
渉外と折衝との違い
渉外や交渉と似ている言葉に「折衝(せっしょう)」があります。
折衝とは、「外交その他の交渉の、相手との談判・かけひき」を意味する言葉です。ここで重要なのは、外交的・政治的な駆け引きが伴う交渉といった意味が含まれる点です。
つまり、利害関係が強い相手方と、どちらも納得できる形で条件を持ちかけ、取引する際に用いる言葉です。
そのため、交渉よりも厳格な公の取引を言い表すときに用います。また、渉外にはこのような相手との駆け引きを伴う折衝も、業務の範囲内となります。
渉外と営業との違い
渉外とは、外部との連絡・交渉が仕事になりますが、それは「営業」とは違うのでしょうか?
後述しますが、営業と渉外とは、業務範囲が同一であることも会社によっては有り得ます。というのも、営業とは顧客に対して商品・サービスを提案したうえで、売上を上げることが仕事です。
そのため、営業活動の過程では必ず「渉外」を行なっていると表現することもできます。
渉外と広報との違い
営業ほど渉外と重複する仕事ではない「広報」ですが、広報も渉外を担当する、あるいは同じような業務を行うことがあります。
広報とは、企業活動や事業、製品・サービスの情報発信をあらゆる方法でおこなう役割を担います。
そのため、外部関係者との間で渉外を行うことは頻繁に発生する仕事と言っても良いでしょう。ただ、営業が売上を上げるという目的があるのと同様に、広報にも「自社情報を外部に発信する」という目的があります。
そのうえで、外部への情報発信のためには、各種メディアといった広報を行う媒体、その他様々な関係者と「自社の情報を正確に、高い効果で発信できる方法」を相談、実施するための渉外が必要になります。
「渉外」の役割と仕事内容とは
渉外の基本的な役割についてはすでに見てきた通りです。
しかし、一概に渉外担当の仕事内容を知るのは結構難しいこと。なぜなら、会社や業界によって、渉外の仕事内容は大きく変化するからです。
ただし、渉外担当の仕事や役割にはある一定の共通点があることも確かです。
そのため、ここでは渉外担当の役割をおおまかに5つに区別し整理しています。世の中の「渉外担当」がどのような業務をおこなっているか、ここでチェックしてみましょう。
1 金融業界における渉外担当
金融機関では、証券などの金融商品や資産運用サポートを実際に顧客に出向きサポートする提案型営業があります。
この提案型営業を、企業によっては「渉外担当」「渉外職」と呼びます。
営業も渉外も、どちらも「金融の知識が少ない顧客に対して金融商品のメリットを理解し、購入してもらうこと」「自社を利用するメリットや強みを伝えて、顧客と契約を結ぶこと」が仕事であるのは同じです。
2 百貨店における渉外担当
百貨店の渉外担当は営業職と同じではなく「販売職」と同じものと考えると分かりやすいです。
百貨店における渉外担当でも、「お得意先の顧客にこちらから出向いて商品を提案する仕事」と「来店したお得意先の顧客に商品を提案する仕事」の2パターンがあります。
渉外担当が接客する顧客のことは「外商顧客」と呼び、百貨店での年間の利用額や年収などが高い「富裕層」が多いです。
つまり、富裕層向けに適切な商品を提案し購入してもらうという目標・業務であるため、金融機関の渉外とも繋がるところがあります。
3 代理店営業をおこなう渉外担当
販売代理店とは、商品・サービス販売元と提携し、販売元の代わりに拡販して売上のマージン(手数料)を取る会社のことです。
保険会社や広告、携帯電話や中古車など、様々な企業が販売代理店を通して人件費を抑えつつシェアを拡大させています。
自社の商品・サービスを売るのは自分たちではなく販売代理店に依頼する場合には「自分たちで営業活動し販売する仕事=営業職」は必要ありませんが、「販売代理店と交渉をおこなう仕事=渉外担当」が必要になります。
この渉外担当のことを一般的に「代理店渉外」という肩書きで呼びます。
代理店では、広い地域のシェアや人材を持っているため、自社商品・サービスシェア拡大を狙う企業が数多く依頼することになります。
しかし一方で、商品・サービスの作り手である自社よりも販売方法や販売拡大の効果的な方法については、協力しなければなりません。そこで重要なのが、自社と代理店を結ぶ渉外になります。
4 ノルマではなく提案力に力を入れる交渉担当
交渉担当は営業職と同じ仕事という説明がありました。
実際、渉外担当の仕事の中には、百貨店や金融機関等ほとんど「個人営業」「法人営業」と同じものも少なくなく、営業職と同様にノルマが求められる仕事も多いです。
ただし、業界や企業によっては、営業職と渉外職(担当)が両方いるケースもあります。この場合、営業職がノルマを達成するために動き、渉外職は「顧客訪問数」を達成するために動くという特徴があります。
たとえば、業務効率化のためのシステム導入をするIT営業がいるとします。
この場合、新規開拓や既存顧客への新しい提案で売上を伸ばす営業活動だけではなく、「自社のサービスをより便利に使ってもらえる」ように提案していく渉外の仕事が必要になります。
そうなると、企業としては「売上を上げてもらうための営業職」「顧客を訪問して商品活用のための顧客訪問をおこなうための渉外職」と役割を分けたほうが効率的です。
また、途中から営業→渉外と役割が変化する場合があります。
企業の活動にはただ売上を上げるだけではなく、顧客に自社を知ってもらえるように活動することも求められます。
特に現代では、商品・サービスの魅力が複雑になりがちで、役立つ商品・サービスもわかり易く丁寧に提案し、使いたいと考えてもらう必要が出てくる場合が多いです。
渉外という言葉が残るかどうかは分かりませんが、現在の渉外担当のような仕事は今後ますます重要になってくると考えられます。
5 アフターフォローやアフターサービス係を担う渉外担当
実際に販売する役割が営業職なのに対して、渉外担当は既存顧客のアフターフォローをおこなうのがメイン業務になる場合もあります。
企業によっては、アフターフォローやアフターサービス部門を分ける会社や、営業職がそのまま顧客訪問というかたちで担う場合も多いです。
しかし、たとえば複雑な商品・サービスを使い続けてもらうためには、契約を結んだのちのフォローアップが必要になるケースがあります。
つまり、渉外担当が別に必要になるのです。
たとえば、CRM(顧客関係管理)と呼ばれる営業効率化システムの導入を事業にしている企業では、導入前のコンサルティングや提案だけではなく、導入後の継続やアフターフォローに人件費を割いている企業などのことを指します。
自社の商品・サービスが継続的に利用されるかどうかは、長い目で見れば新規顧客を獲得する以上に大切なことです。
特に、モノと便利なサービスがありふれている社会では、商品・サービス自体を大幅に安くするか、こういったアフターサービスがどれだけ充実しているかのどちらかで選ばれることになります。
提案型営業のひとつのかたちとして、渉外という仕事を説明できるでしょう。
補足|「渉外」と営業職の違いとは
3〜5の渉外担当では、営業職との業務的な繋がりがあることが分かりました。ここで、「結局、営業と渉外は何が違うの?」と思った方も多いと思います。
しかし、ここで重要なのは具体的な仕事内容の違いではありません。営業と渉外の仕事は、結局のところ「業界」「企業」によって複雑に重なり合っています。
ただ、金融業界や百貨店、そして販売代理店と契約を結んでいる企業などの一部において「渉外」という仕事があることは事実。
渉外を目指すなら、「営業」「法人営業」という求人や仕事内容と一緒に調べたうえで、自分がやりたいと思えるような業界の渉外担当を目指すことが重要になります。
ここでは、渉外の仕事内容と役割について様々な観点から見てきました。
ご紹介してきたように、同じ「渉外担当」であっても、仕事内容や扱う商品・サービス、業務範囲は様々なものがあることがお分かりいただけたのではないかと思います。
次は、渉外を実際に目指したいと考えている方に向け、渉外担当に必要なスキルを解説していきます。今後、渉外担当を目指そうと考えている方はぜひ参考にしてください。
「渉外」を目指すには?|渉外担当に必要なスキル
ここでは、実際に渉外の仕事をこれから目指す方に向けて、「渉外の目指し方」としてご紹介できる「渉外担当のスキル」を解説しています。
1 コミュニケーションスキル
営業職も同様ですが、渉外担当を目指すのであれば対人交渉スキルを身に着けておくべきです。…といっても、ここでいう交渉スキルとは、業界知識ではありません。
業界知識(例:金融業界の渉外職としての知識、百貨店の売場に関する知識など)は、後から身につけることができます。
ただ、働き始めから絶対に求められるのは、「顧客の要望を聴き、引き出すことができる能力」です。
たとえば、百貨店の渉外担当であれば「富裕層とどのように接するべきか?」よりも先に「信頼を構築するためにはどうすればよいか?」を考えるべきですよね。
話題を合わせることができても、人から信頼される行動ができなければ意味がありません。
- 身だしなみ・マナー
- 言動の一致(ウソをつかず知っていることしか話さない)
- 自社製品・サービスに関して分かりやすく説明できる対話能力
- ヒアリング能力(聴く力)
- 自己管理(顧客より早く現地につく、約束を守る・覚えておく)
コミュニケーションを円滑にするためには、基本的な事柄を当たり前のようにできることが必要不可欠です。当たり前のようなことに落とし穴があります。
信頼は当たり前の積み重ねによって構築することができます。
交渉担当をこれから目指したり、営業職としてもっとスキルアップしていきたい方は、ぜひ自分自身が信頼を損なう行動を取っていないか、きちんと振り返ることが重要になります。
2 環境や業務に柔軟に対応する適応力
渉外担当の業務範囲は、仕事内容や会社の事業方針によって大きく変化します。地方銀行でも、たとえば群馬銀行に勤めている方のお話が参考になります。
私は入行して10年目を迎えますが、このなかの(筆者注:法人向け渉外・個人向け渉外・預かり金金融資産提案販売の渉外、エリア全般の渉外の4つ)7年半を渉外係として活動したことになります。そして、結果的に渉外の仕事のすべてのパターンを経験するとともに、群馬県外の大宮支店と、群馬県内でも基幹店に位置づけられる高崎支店の明確な違いも、身をもって感じることができました。
引用:渉外係 – 群馬銀行
どんな環境や業務であれ、渉外の役割は外部関係者や顧客とのコミュニケーションと提案営業に含まれる仕事をおこなうことになります。
上記は金融機関の例ですが、渉外とは大きな業務範囲の中で、自身がおこなうべき仕事と目標とすることがらを常に頭に入れつつ働くことが重要になります。
その分、達成感は強く楽しい仕事ともいえそうです。
もちろん、簡単な仕事ではありませんが、キャリアアップやスキルアップ、年収アップも、努力次第でできる仕事であるといえます。
ここまで、渉外担当として求められるスキルを解説してきました。ここで解説したスキルや経験以外にも、求められるスキルは企業や業界によって様々なものがあります。
渉外の仕事を見つけるためには、先ほども解説した通り「どんな仕事なのか?」をきちんと見極めてから転職活動をおこなうことが大切。
ただ最初は、求人を見つつどんな求人なら自分は応募することができるのか、自分の「転職市場価値」を知っておくだけでも意味があります。
次は、転職を少しでも検討している方に向けて、希望条件の転職先を探すための方法とコツについて解説しています。
転職したい?希望条件の転職先を探すための方法とコツ
ここでは、転職を少しでも検討している方に向けて、転職活動を始めるにあたって必ずおさえておくべきことをご紹介していきます。
1 転職サイト選びは慎重におこなう
これから転職活動を少しでも始めたいと考えている方の中には、まだ実際に求人情報を探し始めていない方がほとんどだと思います。
転職活動でいちばん大切なことは「どうやって転職求人を探すのか?」ということです。
しかし、転職サイトといっても様々なものがありますし、利用できる転職者のターゲットや、効果的な活用法が異なります。
転職サイト選びに悩んでしまう理由は、「そもそもなぜ転職サイトを使うべきなのか?」という根本が分からないからです。
下記記事では、転職サイトのランキングをご紹介しつつ、効果的な活用法や注意点について解説しています。
転職サイトを通じて求人を探したい方は、ぜひ下記記事を参考にして、自分に合った転職サイトを見つけてみてください。
おすすめ記事:おすすめ転職サイトランキング!選び方や登録後の流れ、活用法まとめ
2 転職活動の全体の流れをおさえ、余計な不安を解消する
転職活動を始めたいけど、なぜか不安…そんなふうに思っている人が最初にやるべきことは「転職活動の全体の流れ」をおさえること。
たとえば、料理をするときは、レシピを全体を見て必要な材料を揃え、作り方の流れをある程度覚えてから実際に作り始めますよね。
それと同様に、転職活動も全体の流れを通して学び、その上で実際に始めることで、成功率が格段にアップします。
余計な不安を感じずに、前向きに転職活動をしたいなら、まずは転職活動の基礎知識を学びましょう。
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3 転職が初めてなら、「転職エージェント」を使うべき!
転職活動の流れは知っているけど、それでもまだまだ転職は不安…そう感じてしまう人もいるのではないでしょうか?
頭では分かっていても、実際に転職に踏み出す勇気がなかなか出ない人もいるでしょう。また、単純に仕事が忙しく、転職したいけどできないという方もいると思います。
ただ、そんな人でも転職活動をおこなうことは可能です。
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もちろん、良い転職先が見つからないのであればムリに転職先を選ぶ必要はありません。
下記記事では、あなたにおすすめの転職エージェントが見つかるよう、転職エージェントランキングをご紹介しています。
ぜひ、自分に合った転職エージェントを見つけてください。
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まとめ|渉外は営業よりも幅広い業務を担当する
今回は「渉外」の本来の意味や定義について触れながら、企業内で活動する渉外担当(渉外職)の仕事内容と役割、求められるスキルについて解説してきました。
渉外担当は企業・業界によって業務範囲が変わりますが、会社の売上や業績を大きく左右する重要な役割であることも確かです。
しかも、今後のビジネスシーンでは、渉外担当がおこなう業務が特に重要になるでしょう。
渉外担当として働きたいと考えている方は、今回の記事を是非参考にして頂き、ご自身の働き方やキャリアをよりよいものにしていってくださいね。
参考:「渉外(しょうがい)」の意味や使い方 Weblio辞書