残業代の正しい計算方法は?計算式と便利ツールで割増賃金を調べよう

残業代の正しい計算方法は?計算式と便利ツールで割増賃金を調べよう
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「残業代をしっかりもらえていないかも」「給料の内訳の見方が分からない」など、自分が受け取っているはずの残業代の金額をしっかり把握していない方は多いのではないでしょうか?

就業規則に定められている所定労働時間や、労働基準法で定められている法定労働時間など、残業代を計算するにあたっておさえておかなければならない知識も多いため、「残業代があやふや」なことは多々あります。

しかし、転職したり残業代請求をしたりするときには、具体的な未払い残業代を計算する必要があります。その際に、残業代の計算方法や定義をおさえておくことが大切です。

そこで今回は、残業代や時間外労働分の割増賃金計算に関する基礎知識を解説していきます。ご自身の残業代について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてくださいね。

残業代を計算すべき理由は?

残業代を計算すべき理由

自分の給料のうち、残業代を自身で計算することに意味はあるのでしょうか?

具体的には、下記のようなケースの方が自分で残業代計算をしてみるべきです。

  • どのような内訳で残業代が支払われているかが分からない方
  • サービス残業などそもそも残業代が支払われていない方
  • 転職を機に、職場に残業代請求をしたい方

残業代請求自体は、手続きなどを含めて弁護士などの専門家に依頼する必要があります。

しかし、その場合でも、自分の働く職場の残業代が、現時点で正当に払われているかを確認することが大切です。

今回の記事では、残業代の定義や種類を解説した後、様々なケース別に残業代計算の方法を解説していきます。

 

残業代の基本となる定義は?

残業代の基本となる定義

あなたが会社より受け取る給与(給料)のうち、基本給を除いた「各種手当」が支払われているのをご存じでしょうか?

この手当には、職種手当や通勤手当、住宅手当のほかに「残業代」と皆さんが呼ぶ「時間外勤務手当」も含まれています。

給与のうち、基本給を除いた手当が支払われることはすでに解説した通りです。手当には、職種手当や通勤手当、住宅手当などのほか、皆さんが「残業代」と呼ぶ時間外勤務手当も含まれています。

残業代は労使協定に基づいて残業代を支払うことが労働基準法によって定められています。

 

残業代(時間外勤務手当)が支払われる基準

  • 法定労働時間(1日8時間および1週間40時間)を超えて働かせた場合の残業代
    →時給換算した賃金の25%以上、50%以下の割増賃金
    →月60時間を超過した場合は50%以上 or 有給休暇の付与
  • 深夜(22時〜5時)の労働時間:25%以上の割増賃金
  • 時間外労働が深夜まで及んだ場合:50%以上の割増賃金
  • 休日労働が深夜に及んだ場合:60%以上の割増賃金

 

「法定労働時間」と「法内残業」の違い

残業代の計算をする上で、欠かせない定義が「法定労働時間」と「法内残業」です。

法定労働時間は、労働基準法で定められている労働時間の限度です。 原則として1週で40時間、1日に8時間となります。 「うちの会社は1日10時間労働だ、雇用契約書でも書いてある」というような会社もありますが、この場合は8時間を超えた2時間部分は無効になり、結局8時間と残業2時間というような計算となります。

出典:所定労働時間と法定労働時間の違い – 名古屋社労士法人

就業規則で定めた所定労働時間は超えているが法定労働時間は超えない時間の残業のことを「法内残業」といいます。

出典:労働基準法の基本 – 未払い賃金・残業代請求ネット相談室

法定労働時間は、「1日8時間」なので、企業で定められている所定労働時間が7時間の場合、8時間分働いたとしても残業代の割増賃金にはなりません。

所定労働時間が7時間の企業で8時間まで残業した場合には、通常の賃金の時給換算した1時間分が支給されます。

ご自身で残業代計算をおこなう場合には、法定労働時間と企業ごとの所定労働時間、そして法内残業を間違えないようにしましょう。

それ以外の残業代未払いはすべて労働基準法違反になりますので、もしこのようなケースが継続している場合には、労使問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

ただし、残業代未払いは2年で時効が成立するため、請求は早めに行動することが大切です。

 

3. 「固定残業代」ってどういうこと?

「固定残業代」とは、企業の就業規則に定められていることがある「一定時間分の残業代が定額で支払われる手当」のことを指します。

企業によっては、同じ意味合いで「超過勤務手当」「みなし残業代」などと表記される場合もあります。

しかし、「一定時間」以上の残業が発生した場合には、超過分の残業代が支払われます。

固定残業代は、下記のように求人情報・募集要項上に記載されているため、残業代がどのように支給されるのかを細かく見るために、必ずおさえておくべきポイントです。

ここでは、A企業とB企業に分けて見ていきます。

A企業の求人情報

  • 月給:25万円,固定残業代25時間分4万円を含む
    ※超過分は諸手当別途支給。

B企業の求人情報

  • 月給:25万円
    ※諸手当別途支給。

上記のA企業とB企業は、どちらも同じ求人内容だと考えられますが、実は情報量に差があります。

具体的には、同じ25万円でも、A企業だけが「固定残業代が明確」である点が大きな違いです。

一方、B企業では諸手当が別途支給されることは分かっていても、固定残業代がどの程度、どんな時間まで含まれているのかをハッキリ調べることができません。

実態的な残業時間や、固定残業代の割合をきちんと調べて求人に応募することが重要になります。

残業代と勤務時間、給与の内訳などの基本は、下記記事でも詳しく解説しています。これから転職先を探す際に残業や給料の知識についておさえておきたい方はぜひおさえておきましょう。

おすすめ記事:転職前に知りたい残業代と給与・勤務時間の意味とルール全知識

 

残業代の計算方法とは?|時間外労働・休日労働・深夜労働

残業代の計算方法とは?|時間外労働・休日労働・深夜労働

ここでは、時間外労働・残業によって発生する残業代の計算方法を解説していきます。

通常の残業のほかにも、深夜労働や休日労働の場合の残業代計算をご紹介していますので、あなた自身の知りたい情報に併せて活用してください。

 

1 残業代の目安金額の計算方法

残業代の基本的な計算方法は、「時間外労働」「法内残業」のそれぞれで計算方法が異なります。そのため、単純な時間外労働分だけを計算するかどうかで、計算する内容が変わる点に注意しましょう。

法定時間労働の残業代計算式

時間外労働の時間数(時間) × 1時間あたりの賃金(円) × 1.25 ※1

※1 時間外労働が1ヶ月60時間を超えた場合、超えた分から「×1.5」(中小企業の場合例外あり)

法内残業の残業代計算式

法内残業の時間数(時間) × 就業規則等で定める1時間あたりの単価(円)※1

※1 就業規則等で定める1時間あたりの単価は、基本的には「×1.25」ですが、企業ごとの就業規則(賃金規程)に定められています。

ただし、変形労働時間制・フレックスタイム制・裁量労働制を採用している企業の場合、残業代は発生するものの、計算方法が異なります。(ケース別に記事後半で解説しています)

また、労働時間数は遅刻・早退によって勤務していない時間や、有給休暇取得などを除いた時間になります。

加えて、残業代を計算するためには労働時間数を調べる必要がありますが、そのためには1時間あたりの賃金を計算する必要があります。

1時間あたりの賃金の計算方法は下記の通りです。

1時間あたりの賃金の計算式

月給(円)※1 ÷ 1ヶ月あたりの平均所定労働時間(時間)

※1 月給に含まれないもの:家族手当、扶養手当、子女教育手当、通勤手当、別居手当・単身赴任手当、住宅手当、臨時手当(結婚手当・出産手当など)

また、1時間あたりの賃金を計算するためには、さらに1ヶ月あたりの所定労働時間を計算する必要があります。

1ヶ月あたりの所定労働時間の計算式

(365日 – 年間所定休日日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12ヶ月

つまり、全体を通して大まかな残業代を計算する方法は、下記の計算式にまとめることができます。

大まかな残業代の目安金額の計算式

月給(円) – 家族手当(円) – 通勤手当(円) – 住宅手当(円)  ÷ 21日※1 × 1日あたり所定労働時間数(時間) × 1.25 × 残業時間数(時間)※2

※1 「21日」とは、完全週休2日制(年間52週 × 2日)+9日間の所定休日 = 年間所定休日113日 ÷ 12ヶ月を求めた場合の1ヶ月あたりの平均所定労働日数を指します。

※2 残業時間数は、時効の範囲内である2年以内の法定時間外労働と法内残業の合計時間数で計算します。

法内残業は、就業規則によって割増賃金率が変化するため、それに応じて計算も場合分けする必要があります。

計算が複雑で分かりづらい場合には、記事後半でご紹介している残業代計算ツールを活用しましょう。

 

2 休日労働の割増賃金の計算方法

休日労働も、残業代と同様に割増賃金が課されるため、残業代計算と同じように計算することができます。

休日労働には、下記の2つの種類があります。

休日労働の2つの種類

  • 法定休日労働:労働基準法で定められている週1日の「法定休日」におこなわれた労働。
  • 法定外休日労働:就業規則や労働契約で定められた休日におこなわれた労働。

このうち、割増賃金を支払うことが義務付けられているのは「法定休日労働」になります。

法定休日労働の割増賃金計算式

法定休日労働の時間数(時間) × 1時間あたりの賃金(円) × 1.35

法定外休日の労働であっても、それが法定時間外労働に当てはまる場合には、25%の割増賃金を支払う義務があります。

そのため、法定外休日労働が多い場合には、計算した上で該当するかどうかを確認しましょう。就業規則にも、法定外休日労働の割増賃金率について書かれていることがほとんどです。

 

3 深夜労働の割増賃金の計算方法

深夜労働についても、割増賃金を支払うことが義務付けられています。

深夜労働雨は、「午後10時〜午前5時」までの深夜時間に当てはまる労働です。

深夜労働の割増賃金計算式

深夜労働の時間数(時間) × 1時間あたりの賃金(円) × 0.25 ※1 ※2 ※3

※1 通常の1時間あたりの賃金は月給に含まれているため、「0.25」となります。
※2 時間外労働かつ深夜労働の場合の割増賃金率は「1.5」になるため、割増率を時間外労働の計算式に当てはめて計算します。
※3 法定休日かつ深夜労働の割増賃金率は「1.6」になるため、割増率を法定休日労働の計算式に当てはめて計算します。


ここまで、残業代・休日労働・深夜労働の割増賃金の計算方法について解説してきました。

厳密には残業代と休日労働、深夜労働は別のものですが、労働基準法が義務付けている割増賃金や、現状に即せば密接な関係があります。

残業代を計算する際には、これらの残業・時間外労働についても計算しておきましょう。

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